長年の手芸経験を活かして:ものづくり教室で繋がる喜びと生きがい
定年後の新たな一歩:趣味から生まれたものづくり教室
定年退職を迎え、時間にゆとりができたものの、何をすれば良いのかと漠然とした不安を感じていた頃のことです。会社員時代は趣味として楽しんでいた手芸も、日々の忙しさにかまけて、なかなか集中して取り組むことができませんでした。しかし、ふと手元にあった昔の作品を見た時、「もう一度、この温かい時間を取り戻したい」という気持ちが込み上げてきました。
そして、ただ一人で作品を作るだけでなく、「この楽しさをもっと多くの人に伝えたい」という思いが芽生えたのです。それが、私がものづくり教室を始めるきっかけとなりました。
小さな教室から始まった、新たな社会との繋がり
私が始めたのは、昔から得意だった編み物と、新たに学び始めたフェルトを使った小物作りの教室です。最初は自宅のリビングの一角を使い、地域の広報誌で生徒さんを募集しました。初めての試みでしたので、果たして人が集まるだろうかと不安でしたが、数名の方が興味を持ってくださり、教室を開くことができたのです。
活動は週に一度、午後の2時間程度です。材料費は実費でいただき、少額の受講料を設定しました。特に高価な道具は必要なく、手軽に始められるのがこの手芸の良いところだと考えています。生徒さんの中には、私と同じように定年を迎えられた方や、子育てが一段落した方など、様々な方がいらっしゃいました。
苦労と工夫、そして喜びの瞬間
教室を始めた当初は、人に何かを教えることの難しさを痛感しました。皆さんのペースや理解度に合わせて説明する工夫が必要ですし、時には同じことを何度も繰り返してお伝えすることもあります。また、年齢層も幅広いため、それぞれの方に合ったコミュニケーションを心がけるように努めました。
しかし、生徒さんが熱心に作品に取り組む姿や、「できた!」と満面の笑顔を見せてくださる瞬間に立ち会うたびに、この上ない喜びを感じます。特に、最初は不器用だと諦めかけていた方が、私の少しのアドバイスで素晴らしい作品を完成させた時の感動は忘れられません。そんな時、「ああ、この教室を開いて本当に良かった」と心から思います。
生徒さん同士も、共通の趣味を通じて自然と会話が弾み、今ではお茶を飲みながら世間話に花を咲かせる、温かい交流の場となっています。私自身も、生徒さんから地域の情報や新しい趣味の話を聞くことができ、毎日がとても刺激的です。
ものづくりがくれた、豊かなセカンドライフ
このものづくり教室を通じて、私は「教えることの楽しさ」や「人との繋がりの大切さ」を改めて実感しました。作品が完成した時の達成感はもちろんですが、何よりも生徒さんの笑顔と「ありがとう」の言葉が、私の生きがいとなっています。
退職前は「社会との繋がりが薄れるのではないか」と心配していましたが、今では以前よりもはるかに多くの人々と交流し、充実した日々を送っています。そして、自分の長年の経験が誰かの役に立ち、喜んでもらえるという喜びは、何物にも代えがたいものです。
これからセカンドライフを迎える方へのメッセージ
セカンドライフは、これまでの経験を活かし、新しい自分を発見する絶好の機会です。もし、何か始めてみたいけれど、何から手をつければ良いか分からないと感じているのでしたら、まずはご自身の好きなことや得意なことを見つめ直してみてください。
「こんなこと、誰かの役に立つだろうか」と思うような小さなことでも、もしかしたらそれが誰かの喜びとなり、新たな繋がりを生み出すきっかけになるかもしれません。地域の公民館やカルチャースクール、ボランティアセンターなどに相談してみるのも良いでしょう。一歩踏み出す勇気を持つことで、きっと新しい世界が広がり、豊かなセカンドライフが待っているはずです。