趣味のガーデニングが新たな生きがいに:地域を彩る緑化ボランティア
定年後の「空白」を埋めてくれた緑の活動
定年退職を迎えてすぐの頃、会社勤めの日々とは異なる時間の流れに、漠然とした不安を感じていました。長年打ち込んできた仕事がなくなったことで、毎日の生活にぽっかりと穴が空いたような感覚があったのです。趣味のガーデニングは以前から続けていましたが、それはあくまで自己満足の世界に過ぎず、何か社会との繋がりを見つけたいと漠然と考えていました。
そんなある日、地域の広報誌で「公園緑化ボランティア募集」の記事が目に留まりました。内容は、地域にある公園の花壇や公共スペースの緑化活動を手伝うというものです。これなら、長年の趣味を活かしつつ、地域に貢献できるのではないかと思い、思い切って参加の申し込みをしました。
花と土が繋ぐ、新しい日常
活動場所は、自宅から自転車で10分ほどの距離にある小さな公園でした。毎週火曜と金曜の午前中、約3時間の活動です。費用は、基本的に自治体から支給される苗や道具を使わせていただくため、ほとんどかかりません。軍手や帽子といった個人の道具は持参しますが、それもさほど負担にはなりませんでした。
具体的な活動内容は、季節の花の苗植え、水やり、雑草抜き、落ち葉の清掃、簡単な剪定などです。最初は他の参加者の方々とどう接すれば良いか戸惑うこともありましたが、皆、花や植物が好きという共通の思いがあり、すぐに打ち解けることができました。年齢も経験も様々ですが、和気あいあいとした雰囲気の中で作業を進めています。
特に印象的だったのは、公園を訪れる地域の子どもたちが「きれいなお花だね」と声をかけてくれたことです。手塩にかけて育てた花が、誰かの喜びになっていると実感できた瞬間でした。
試行錯誤を重ねて見つけた「私の役割」
もちろん、楽しいばかりではありませんでした。夏の炎天下での水やりや、冬の冷たい風の中での作業は、体力的にも楽ではありません。また、これまで自宅の庭で育てていた植物とは異なる、公共の花壇での管理には、病害虫対策や土壌改良など、新たな知識が求められました。
そうした壁にぶつかるたびに、ボランティアの先輩方や、地域の園芸店の方にアドバイスを求め、少しずつ知識を深めていきました。図鑑を読んだり、インターネットで調べたりする時間も増え、それはまるで、現役時代に新しい仕事に取り組むような、学びの喜びを与えてくれました。
特に工夫した点は、季節ごとの花壇のデザインです。春にはチューリップやパンジー、夏にはサルビアやマリーゴールド、秋にはコスモスやキクなど、年間を通じて公園が彩り豊かになるよう、皆で意見を出し合いながら計画を立てました。一つ一つの花が、地域の方々の心を和ませることを想像しながら作業するのは、大きな喜びです。
緑の活動がもたらした、心豊かなセカンドライフ
この緑化ボランティアに参加して得られたものは、計り知れません。まず、規則正しい生活リズムが戻り、適度な運動によって体が引き締まりました。何よりも、地域の方々との交流が増え、世代を超えた新しい友人を得ることができました。
活動を通じて、私は「地域を彩る一助となる」という明確な目的を持つことができました。自分の手で植えた花が成長し、公園に美しい彩りをもたらすのを見るたび、大きな達成感と「必要とされている」という確かな生きがいを感じます。単なる趣味だったガーデニングが、今では私のセカンドライフの中心となり、社会との繋がりを深く実感させてくれる大切な活動になったのです。
一歩踏み出す勇気と、好きなことへの情熱
これからセカンドライフを迎えられる方や、生きがい探しに悩んでいる方へ、私からお伝えしたいことがあります。それは「自分の好きなこと、得意なことを、もう一度見つめ直してみてはいかがでしょうか」ということです。
私の場合はガーデニングでしたが、料理、手芸、読書、スポーツなど、長年培ってきた趣味や関心事が、意外な形で社会との接点になるかもしれません。そして、地域には様々なボランティア活動や市民活動の機会があります。まずは、地域の広報誌やインターネット、公民館などで情報を集めてみることから始めてみてください。
最初の一歩は勇気がいるかもしれませんが、無理のない範囲で、少しずつ活動に参加してみることが大切です。誰かの役に立てる喜び、新しい人との出会い、そして何よりも、好きなことに打ち込める充実感は、セカンドライフを豊かにするかけがえのない宝物となるでしょう。緑に囲まれた中で過ごす時間は、私に新しい希望と活力を与えてくれています。皆さんも、ぜひ「自分の役割」を見つけて、充実したセカンドライフを楽しんでください。